輸出品のティーカップ

骨董市を巡るのが好きだ。


かつて自分の時間とお金がふんだんにあった頃は、

週末に朝一番の新幹線にのって京都の東寺や天満宮で開催される骨董市を訪れ、

街をぶらぶら散策して写真を撮り、日帰りで帰ってきたものだ。

東京にも世田谷のボロ市、中野薬師寺の骨董市や、花園神社の骨董市があって

週末には早起きをして、よく繰り出していった。

(骨董市の朝は早い。現地に8時前、が理想。)


何か値の張るものを買うわけではないが、陶磁器やガラス、ブリキのおもちゃ、

古い「こどものとも」や着物のものなどを眺めては

その時心に響いたものをちまちまと買ってきた。


一緒に骨董市を何度も訪れたかつての師は、

「今日この中で自分が一番良いと思うものを買いなさい」と教えてくれた。

仕事の展示にどうしても大黒さまの「打ち出の小槌」が必要で、

出かけた骨董市で古いものをみつけて大喜びで師にむかって掲げたことを、

懐かしく思い出し笑いする。


骨董との出会いは一期一会。この機会を逃したら次はあるとは限らない。


毎年冬に開催される世田谷ボロ市にはよく足を運んだ。

人出が多いので子供ができてからは足は遠のいてしまったのだが。

10年以上前になるだろう、ある年のボロ市でこのティーカップたちをみつけた。




日本が戦前に輸出用に作っていた、染付磁器のティーカップ。

卵の殻のように飲み口が薄くて、持ち手も非常に華奢である。


飲み終わるとティーカップの底にレリーフとして彫り込まれている舞妓の顔が浮かびあがる。

国内向けに作られるものよりも海外向けのオリエンタリズムに満ちたそれらは

輸出先で人々を驚かせていたのかもしれない。

裏には「日本特製」とかかれている。



一客五百円くらいではなかったか。

どうして全て買い占めなかったのか、と思うような値段だが吟味して四客を選んだ。

全て柄違いで、オランダのデルフト焼きを意識している風車の描かれたもの、

鳳凰柄、金魚柄、そして舞妓のいる街並み。

驚くほど薄いのにオーストラリアへも欠けずに持ってこられたのは幸いで、

お客様がある時にこれでお茶を出すと日本のことを話すきっかけになる。

海外から見た異国情緒あふれる日本がぎゅっと詰まっているのでわかりやすく、喜ばれる。


小ささと繊細さが生真面目な顔をしてモノクロの写真に写っているような、

小柄な日本人の姿を彷彿させる。


日本の職人が海の向こうの人を喜ばせようと

ティーカップを作り輸出していた時代が確かにあった。

「日本特製」という言葉にもその気負いが溢れるようで、眩しい。


海外の旅行先で訪れた骨董市でも、

これほど小さく薄く繊細なティーカップには、まだ出会えない。

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