still green

現在は生業として帽子をデザインし販売しているが、

最初に就職したのは出版社の広告部門。

入って数年目で女性向けの一般誌の創刊に携わることになった。

創刊発表会のためにグラフィックデザイナーを探して雑誌をくるうちに、

削ぎ落とされた中にどこか柔らかさのある作品群に目がとまり、

とある女性のアートディレクターにたどり着いた。


サン・アド出身でフリーランスとして活躍されていたこの方に連絡し、

同じくサン・アドの女性のコピーライター、プロデューサーを紹介されて共に仕事をすることになる。

雑誌を広告クライアントに紹介するための媒体資料、

数百人規模の発表会全体のコンセプトとデザイン・招待状・来場者へのギフトと礼状。

一連を、全く新鮮な雑誌のイメージで届けるためのデザインを依頼した大きな仕事だった。

とっちらかったまま突っ走っているようなこちらの要望を聞き出し整理して、

何案かの筋の通ったデザインとコピーで毎回打ち返してくるその三方との仕事に触れるうち、

「私もプロになりたい!」とエクスクラメーションマーク付きでふつふつとした憧れが

心中に湧き上がりはじめた。

今思い返せばその三方も業界では若手であった方々なのだが、

アートディレクター、コピーライター、プロデューサーという役割分担を

間近にみるこことも初めての経験であったし、

「雰囲気」が次第に色となり形となり言葉となって心地よく人々に届くプロセスは、

鮮烈に心に刻まれた。

一連の仕事が終わり、無事に創刊を果たした数ヶ月後にその仕事を辞めることになる。

私もプロになりたい、その想いで突き動かされた結果

縁あってクリエイターの伊藤佐智子氏の事務所に転職することになった。


それを報告し、離職の際に三方からプレゼントされたのがこの一輪挿しである。


花を飾るとその場がふっとグラフィカルに立ち上がる様が気に入って

引っ越しの度にも大切にしてきた。




三方と同じサン・アドの方がデザインされた一輪挿しの名前は「still green」。

「未熟」。はじまっていくもの、その様子。という言葉が添えられていた。

三方の仕事ぶりを眩しくみつめながら夢中に仕事をした結果

違う道を進もうとしている私に送られた言葉だったのだろう。

この一輪挿しをみるたびに、当時の自分の焦りと憧れを思い出し照れくさい。

だが妄想のように突き動かされて今ここにいることに、後悔はない。

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