コスチュームジュエリーのブローチ

スカーフやブローチ、手袋に帽子。

装いの仕上げとして当たり前だったアイテムは

服がカジュアルになり簡素化していく中で

次第に省かれてきた。

上手に身につければそれだけおしゃれが際立つが

中でもブローチはきちんと胸元にとめると

急にあらたまって野暮ったくなってしまうし、

そもそもカットソーやTシャツ素材にはピンバッチくらいの

軽いものしかつけられない。

カジュアルを好む人々にはもはや縁遠いものかもしれない。

母はおしゃれな人で

宝石以外にコスチュームジュエリーも沢山もっていた。

真っ赤な大きなイミテーションビジューが中央にはまった

手のひらぐらいのサイズのあるブローチ。

こどもの目にはおとぎ話にでてくるような華やかさで息を飲んだ。

小学校の時、シンデレラの劇をすることになり、

その王子役の子の胸元につけるブローチとして貸して欲しいと頼み込んだ。

母はしぶしぶ了承してくれたが

それをつけた友人は小学生らしく走り回って転び、

胸元の巨大なブローチは見事に二つに折れ曲がって

中央の赤い石は取れてしまった。

青ざめて、母にそれを報告した時の不安や恐怖を今でも覚えている。

「だからいったのに」と当然厳しくしかられ、

修理しても歪になってしまった巨大ブローチは

それ以来しまいこまれ実際に母が使っているのはみなかった。

母の大切な宝石を壊してしまった、と恐ろしいような気がした。

実際はそこまで恐ることはなかったのに、

そうは慰めてもらわなかった。

大人になりとある年のクリスマスに何が欲しいかと聞かれて

ヴィンテージの大きなブローチが欲しいと述べ、

オンラインで好みのものを探して

彼にプレゼントしてもらった。

5,60年代のものだと思われる。



直径6cmほどでしっかりした存在感があり

まばゆいほどの輝きだ。

特別な時につけるのではなく、普段に好んでつける。

デニムやリネンのカジュアルな服に恐れずどんどんつける。

透明なガラスはさながら海の水面の輝きのように装いに光を添える。

改まった顔をしたものはさりげなく、

自分は忘れているように身につけるのがよい。


本物のジュエリーを見せびらかす金持ちを笑うように、

ココ・シャネルは長いイミテーションパールを

首に何重も巻いて一斉を風靡してしまった。

コスチュームジュエリーの良さはためらわずにつけられることと、その華やかさにある。


服だけでなく鞄や帽子にもどんどんつけてみる。

あのしまいこまれた赤いブローチを葬うように、

今日もこのブローチをつけよう。

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